高尿酸血症

Q1 尿酸とは何ですか?

  • 「尿酸」は「プリン体」から生成される老廃物の一種で、尿中から排出されます。

  • プリン体は食事から摂取されるものが2-3割で、体内で作られるものが7-8割です【図1】

  • 体内での「プリン体」は「細胞の新陳代謝」と「エネルギー代謝」によって作られます。


    (1)細胞の新陳代謝

    古い細胞は新陳代謝によって新しい細胞に変わっていきます。このとき古い細胞の中にある遺伝子(核酸)の構成成分が「プリン体」であるため、新陳代謝が進むと古い細胞の核酸から「プリン体」が放出され体内の「プリン体」が増えます。

    (2) エネルギー代謝

    「プリン体」はエネルギー代謝のときに使われるATP(アデノシン三リン酸)の構成成分です。エネルギー代謝によりATPは分解されてADP(アデノシン二リン酸:ATPが分解されてできる産物、ATPが分解されてADPになるときにエネルギーが発生する)になります。通常のエネルギー代謝ではATPは一旦使われても再生産されるので、「プリン体」が放出されることはありません。しかし、激しい運動などで、必要とされるATPが多くなった時に、ADPからATPの再合成が間に合わなくなり、余分なATPは分解されて「プリン体」が生じることになります【図2】



【図1】

(日経Gooday 2017/5/23より引用)

 

【図2】

Q2 尿酸が上がってしまうのはなぜですか?

正常な状態では、体の中で作られる尿酸の量と尿中から排出される尿酸の量が同じであるため、血液中の尿酸の値は正常な状態が保たれます。しかし、体内での尿酸の産生量が多すぎたり、尿中への尿酸の排出量が低下したりすると血液中の尿酸の値が高くなります。 よくプリン体の摂取過剰が尿酸増加の原因と言われますが、体内の尿酸は、2-3割は食物から摂取されたもので、7-8割は体内で産生されたものになります。

Q3 痛風発作とはどのような状態でしょうか?

正常な状態では尿酸の産生量と尿中への排出量のバランスがとれているため、血中の尿酸は正常の範囲内に保たれています。しかし、尿酸の産生が過剰になったり、尿中への排出が低下したりすると尿酸の値が高くなります。これらの理由で血液の尿酸の値が7.0mg/dlを超えるようになると、体の中の尿酸の量が多くなりすぎて、尿酸が溶けきらずに結晶となり、体のいろいろな部位に集積しはじめます。本来尿酸は結晶としては存在しないので、体の中の白血球は尿酸の結晶を異物ととらえ、排除しようとして炎症が起きます。「尿酸の結晶沈着→白血球による炎症」の結果、沈着部位が赤く熱をもって腫れ上がります。これが痛風発作です。痛風発作はストレスや激しい運動、尿酸値の急激な変動などがきっかけで起こります。若い男性の方で、夏場、足の親指の付け根に起こりやすく、痛風発作が起こると痛みで靴が履けなくなるケースが多いといえます。

Q4 高尿酸血症の合併症はなんですか?

高尿酸血症では痛風発作以外は自覚症状を伴うことはありません。しかし、次のような重大な合併症があるので、この合併症予防のためにも治療が必要になります。

  • 腎機能障害

  • 尿酸の結晶が腎臓の中に溜まって腎臓の機能が低下してしまいます。腎臓の機能が低下すると尿中から排出される尿酸の尿がさらに低下し、血液の尿酸の値が上がります。血液の尿酸の量が上がるとそれがまた腎臓に溜まり腎臓の機能を悪化させるという悪循環をもたらします。

  • 尿路結石

  • 尿酸値が高い人で尿が酸性になっている方は、尿のなかに尿酸による結石ができやすくなっています。片方の脇腹がとても痛くなり救急外来を受診するようなケースも多々あります。

  • 動脈硬化

  • 高尿酸血症の患者様が動脈硬化による心血管病変(狭心症や心筋梗塞)、脳卒中にかかる危険性は健康な人の数倍になると言われています。動脈硬化による狭心症、心筋梗塞、脳卒中などの合併症も重要になります。

Q5 「7,8,9のルール」とは何ですか?

高尿酸血症の治療においては「7,8,9のルール」ということが言われております。

これは、
7=「尿酸値が7.0mg/dl以上で痛風発作または痛風結節を認める場合はすぐに薬物治療を開始してください」
8=「尿酸値が8.0mg/dl以上で腎障害、尿路結石、高血圧、高脂血症、虚血性心疾患、耐糖能異常などの合併症がある場合はすぐに薬物治療を開始してください」
9=「尿酸値が9.0mg/dl以上の場合はどんな場合でもすぐに薬物治療を開始してください」

ということです。

(高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインより引用)

Q6 尿酸値を下げて、痛風発作や合併症を起こさないようにするにはどうすればいいでしょうか?

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  • 食事の内容、量に注意する


  • (1) 適正摂取カロリーを守る

    1日に摂取する適正カロリー=標準体重×20-30kcal
    ※標準体重=身長(m)×身長(m)×22

    (2) プリン体の取りすぎに注意する

    「肉類」「魚類」「魚卵」「アルコール」などプリン体の多い食品の取りすぎに注意する。

    (3) 野菜や海藻などアルカリ性食品を積極的にとる

    野菜や海藻などのアルカリ性食品は尿の酸性化を防ぐ役割を果たします。
    尿の酸性化を防ぐことで尿路結石ができにくくなります。

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  • 体重を落とす

  • 体重が増えると尿酸値が上がり、体重が減ると尿酸値は下がります。尿酸値の8割程度は摂取するプリン体が多いか少ないかではなく体重の増減によって決まると言われています。そのためどんなに摂取するプリン体を減らす努力をしても体重が増えてしまえば、尿酸値は増加してしまいます。体重が増えると尿酸が増える理由は次の2つになります。

    (1)体重が増えるとエネルギー消費が増えます。エネルギー消費が増えるとエネルギー消費の燃えカスである尿酸も増えることになります。


    (2)体重が増えると血糖をさげる物質であるインスリンが過剰になります。インスリンは血糖を下げる作用だけでなく、腎臓でのナトリウム再吸収を増加させ、これとともに尿酸も再吸収するため、尿酸の尿中排泄を低下させてしまいます。そのため、体重増加でインスリンが過剰な状態になると尿中への尿酸排泄が低下し尿酸値が増加すると言われています。


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  • アルコールを減らす

  • ビールにプリン体が多いのは事実です。しかし、ビール以外の日本酒、焼酎、ウイスキー、ブランデー、ワインであっても過度なアルコール摂取は摂取エネルギーの増加となり痛風の原因となります。適度な飲酒量(1日ビール500ml以内、日本酒180ml以内、焼酎90ml以内、ウイスキーまたはブランデー60ml以内、ワイン180ml以内)を守ることが大事です。

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  • 水分を十分にとる

  • 尿酸は尿から排出されるため、尿の量が増えれば、体内の尿酸が体外へ出やすくなります。1日2Lを目安に水分を取るようにしてください。(注:清涼飲料水は余分なエネルギーが摂取されるため、カロリーのない水の摂取としてください。また心不全や腎不全の方は過剰な水分摂取は控えるようにしてください)

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  • 適度な運動をする

  • 有酸素運動→体重減少→消費エネルギーの低下と過剰なインスリンの低下→エネルギーの燃えかすである尿酸産生の低下と尿中尿酸排泄増加 このような機序で尿酸値は低下します。ただし、激しい運動はかえってエネルギーの燃えかすである尿酸が急激に増え痛風発作の原因となるので注意してください。

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  • ストレスを上手に発散する

  • 痛風になる人の特徴として「せっかち」「行動的な人」が多いと言われています。早食い、大食いで仕事をバリバリこなしているような人です。こうしたタイプの人はストレスにさらされやすくなります。尿酸を下げるためには飲酒や過食以外のストレス解消法を見つけるようにしてください。

Q7 尿酸を下げる薬にはどのようなものがありますか?

  • 尿酸生成抑制薬

  • 尿酸の産生を抑える薬です。

  • 尿酸排泄促進薬

  • 尿中への尿酸の排泄を促進する薬です。

    ※痛風発作を起こしたことがある人、高血圧がある人は尿酸値6.0mg/dl以下を目指しましょう